祖父が営んでいた窯『宇倍野』を復活させて、食卓を華やかに彩りたい!

テストピースとは?

テストピースとは陶芸家が色を作るために使用する陶器のカケラの事です。
通常、陶器は釉薬という薬を塗って焼成します。目的は耐久力や耐水性の向上などです。
この、使用する釉薬の種類によって器は様々な色へ変化します。
その変化を見るために用いるのが陶器のカケラ「テストピース」と呼ばれているものです。
一つの色を作るのに数十から数百のテストピースを焼き、色の出方を確認します。

焼いたテストピースはどうするんですか?

どの陶芸家さんも基本的には一緒だと思いますが、残すか廃棄かのどちらかですね。
いい色が出た場合はデータを残しておきたいので保存します。
ただ、ボツになってしまった物は廃棄される方がほとんどかと思います。
勿体無いかもしれませんが、一つの釉薬でも何十と試しますから、物理的に作業場を圧迫するんですよ(泣)

釉薬は何種類ぐらいありますか?

めちゃくちゃあります。
数えるのは...不可能かもしれません。
釉薬の主な原料は石や灰といった自然界にあるものを使います。
特によく使われるのが銅や長石などの石、藁や木の灰などですね。
ただ、一口に石や灰と言っても産地によって出る色が違ったりします。(そこが面白くも難しいところですが笑)
他にも配合の割合、焼成する窯など様々な条件下で出る色が変わってきます。
そのため、釉薬は調合する人ごとに全くの別物になるんです。

市販の釉薬もあるようですが?

そうですね。市販の釉薬もあります。
釉薬の専門屋さんがあり、そこから仕入れを行えばある程度安定した色が出せます。
作家さんの中にもいわゆる”既成の釉薬”を使う人もいます。
ですが、私の祖父は自ら釉薬の調合をしていたので、祖父の作っていた色を再現させるためには私も自ら釉薬を作るしかありません。

多くの作家が捨てる「勿体無い」を商品に

テストピースを販売する理由は?

これは私、ではなく私の陶芸活動をサポートしてくれている日野さんの案です。
-ある日の会話-
日野「これ何?」
森田「テストピース。それに釉薬つけて色を試すんじゃ」
日野「ふーん。試したやつはどうするん?」
森田「ええやつは残す。おえんやつは捨てる」
日野「え⁉︎捨てるん?勿体なくね」
森田「勿体ないけど残しとっても邪魔になるだけじゃ」
日野「コレ販売しようや」
森田「こんなカケラ誰が買うんで?販売は無理じゃろ」
日野「そりゃ、カケラじゃけぇ。普段使い出来る小皿の形にすればえんじゃねんか?」
森田「...!!」
目から鱗というか、稲妻に打たれたような衝撃でした。笑
陶芸家がテストピースを作れと言われたならば迷わず陶片を作ります。
もちろん私もその例に漏れず、陶片を作っていました。慣習というか固定概念というやつですね。
彼曰く、「作家がボツにした色でも欲しい(綺麗な色)と思う人はいるかもしれない。それに何より作家がどんな思いで作っているのか、制作過程を一緒に共有できる。完成された商品とは異なり未完成がゆえの一点物には価値がある」とのことでした。
確かに...と思いましたね。
彼とのこのやり取りで、テストピースを販売しようと決意しました。(彼が私のくだらないプライドをへし折ってくれたのもこの時ですが、その話はまた別の機会に笑)
長くなってしまいましたが、なぜ私がテストピースの販売をするのか一言で言うと「貴方と一緒に宇倍野を復活させたいから」です。
再現したい祖父の色、私の色、応援してくれる貴方の色。
このテストピース販売を通して、みなさんと一緒に「宇倍野」を復活させ、食卓を彩れるような器を作っていきたいと思います。

日野から皆さんへのメッセージ

2024年5月からスタートした森田の挑戦『祖父の陶芸窯宇倍野を復活させたい』は、作品のクオリティーを追求するだけでなく、日本の陶芸界の課題解決とも向き合っています。
現在、日本の陶芸界は「材料費の高騰」という問題に加え、「海外で大量生産された安物に地位を奪われている」という問題を抱えています。
その一因は、食料品や介護とは違って、陶器は「誰かの困り事を解決するサービス」ではないので、一般の方の一歩目の感想が「おめえが好きで作ったモノやこう、わしゃ知らん」になってしまうことにあると考えます。
一般的な陶芸作家は(裏側を見せることもないし)制作過程から、失敗した作品から、何から何まで、「こんなの作りましたー。買ってくださーい」といった事後報告が多く、お客さんとの関係性が一方通行になりがりです。
そりゃ「ワシは知らんわい」となるわけで、この状態で、器や花瓶を販売したところで、購入を検討してくださるのはコアファンだけ。
「少ない人数からたくさんのお金をいただく」という状況から抜け出せずにいます。
(※興味を持ってくださる人の数が増えれば、問題に対する打ち手も増える)

そこで『宇倍野』では、一般のお客さんの「ワシは知らんわい」を「ワシも知っとる」に変えるため、制作過程をゼロから共有し、作品を「自分事」にしていただく取り組みを進めています。

触れ合った時間が『愛着』へと変わる

人が作品に「愛着」を持つ為には、度重なるPRで作品との【接触回数】を増やすだけでなく、作品と一緒に過ごす【接触時間】が必要だと考えました。

子供の頃に買ってもらったぬいぐるみやロボットが大人になっても捨てられないのは「長い時間を共に過ごしたから」という理由があると思うのですが、あんな感じで。

というわけで、『宇部野』では、皆様に思い入れを持っていただく為に…

テストピースの販売を行います。
制作過程、プロセスを共有し、窯の復興にかかる予算をテストピース販売で集めることにしました。
みんなで作る『宇阿野』を、どうぞ宜しくお願いします!